横尾 英孝さん
(千葉大学医学部附属病院 総合医療教育研修センター 特任助教)
今回、医師であるとともに、相手の潜在能力を引き出すコミュニケーション技術においてプロの資格を持っていらっしゃる横尾英孝先生にお話を伺いました。横尾先生は、その資格を生かし、新しい切り口で人と人とのコミュニケーションのあり方を見つめ、より質の良い医療の実現のため、多種にわたる医療業種が協力し、限られた医療資源を効率よく活用する方法を考えられています。
■医師になった理由をお聞かせください。
祖父が内科医という背景もあり、幼少時から医学に興味があった。また、6歳のときアレルギー性紫斑病に罹患し松戸市立病院の小児医療センターに入院した。その際患者として不安、寂しさや絶食・疼痛のつらさ、医療スタッフとの関わりや軽快したときの喜びを体感し医師になりたいという気持ちが強くなった。
■今の専門分野を選んだのはどうしてでしょうか。
内科の中でも全身を診たかった。生活習慣病は身近で患者が爆発的に増えていて完治が難しく、その合併症は患者のQOLや医療費を著しく損ない対応する医療スタッフの負担も大きい。罹患した身内の経験からも、その診療や予防、研究に携わることは医療に大きく貢献できると思った。
■現在の職場での仕事内容をお聞かせください。
大学病院で糖尿病を中心とした内分泌代謝疾患の診療や臨床研究を行っている。また、アテンディングという教育専任医師の仕事も兼任し、学生や研修医の教育を担当。さらに、コーチングという相手の潜在能力を引き出すコミュニケーション技術についてのプロの資格も所持しており、それを活かした患者や医療関係者のエンパワーメントや人材開発にも携わっている。コミュニケーション技術のプロ資格は多業種の連携を考えるだけでなく、医療スタッフ一人一人のやる気を上げるという面においても生かすことができる。このような技術は目に見えないスキルであるからこそ難しいが大切である。
■具体的にこれからの糖尿病治療のあり方についてお聞かせください。
糖尿病は症状の軽いうちから、医療スタッフが介入し症状の悪化を予防していく重要である。患者数が増え続けている糖尿病において、全ての患者を専門医が診ることは不可能である。特殊な症例に関しては専門医が診て、全体の統括を行い、また糖尿病治療において必須とされている食事運動療法に関しては、看護師や栄養士など医師以外の医療スタッフの積極的な介入と連携が必要である。そして、集団で糖尿病患者の状態を見ることで、外来診察で一人一人の患者を診るだけでは分からなかったことが見えてくることがある。このように集団で捉え、一般化することでガイドラインを示すことも必要である。
■今後の目標をお聞かせください。
患者の健康寿命や医療資源確保に役立つ生活習慣病治療のエビデンスを創出するとともに、激変する医療に十分対応できるような医学教育を展開できるようにしていきたい。また、国際交流をさらに深めて世界に発信できるような医学教育の研究をしたい。コーチの国際資格取得も現在目指している。
文責:上條恵莉子
横尾 英孝(よこお ひでたか) さん
2005年3月(平成17年)千葉大学医学部卒業
2005年4月 東京歯科大学市川総合病院 初期臨床研修医
2007年4月 千葉大学医学部附属病院 糖尿病代謝内分泌内科
(旧第二内科)に入局
2007年10月より横浜労災病院内科の研修を経て、
2009年4月 千葉大学大学院医学薬学府博士課程
(先端生命科学専攻細胞治療内科学)入学
千葉大学医学部附属病院臨床試験部の特任研究員を兼任しつつ、
2013年3月 医学博士取得
2014年4月 総合病院国保旭中央病院 糖尿病代謝内科 医長
2016年4月 千葉大学医学部附属病院 総合医療教育研修センター 特任助教
現在に至る
専門医など:日本内科学会総合内科専門医 日本糖尿病学会専門医・研修指導医
日本コーチ協会認定メディカルコーチ
(一財)生涯学習開発財団認定プロフェッショナルコーチ
日本医療マネジメント学会認定医療福祉連携士
所属学会:日本内科学会 日本糖尿病学会 日本内分泌学会
日本医療マネジメント学会 日本慢性疾患重症化予防学会
日本医学教育学会
今回のインタビュアー
上條 恵利子さん(千葉大学医学部3年)