吉村 健佑さん
（厚生労働省 国立保健医療科学院 医療・福祉サービス研究部 主任研究官）
今回、厚生労働省医系技官としてご活躍されている吉村健佑先生(千葉大学医学部 平成19年卒業)のお話を伺うことができました。
吉村先生は弟さんのご病気をきっかけに医師を志し、他大学を経由して千葉大学医学部へ進学されました。大学2 年生の一人旅でバイタリティ溢れる中国の方々 に衝撃を受け、帰国後に自分でも何か主体的に行動したいと考え、平成15年に亥鼻祭を復活させたご実績があります 。亥鼻祭を実現する中で、大切な時間を投資してくれる仲間、失敗を恐れずに自分の想いに共感してくれる仲間の存在を肌で感じ、千葉大学亥鼻の底力を再確認したと当時を振り返られました。卒業後はご自身の関心が「患者さんの社会適応にある」と結論して、精神科の道へ進み８年間の臨床経験を積まれました。その間、医師5年目の時に東京大学大学院医系研究科公共健康医学専攻(公衆衛生大学院)へ進学され体系的に公衆衛生学を学ばれました。その後、医学部同級生の松本晴樹氏の誘いもあり平成27年度に厚生労働省へ入省されました。
「平成27年4月から29年3月まで、厚労省の保険局と医政局を併任して医療ビッグデータ、医療ICT分野の政策立案・制度設計に携わりました。これが、めちゃくちゃ面白かった。国家的に超重要な案件なのに、省内の関係部門も体制が整っておらず担当官の人数も全然足りない。結果的に医系技官が一人でカバーする範囲が膨大となります。医療情報に関して、多くの事案に対して自分の意見が求められました。高まるばかりの需要に比して研究者も多くない。まさにブルーオーシャンです。この状況は今も変わっておりません」と話されました。平成29年4月より厚生労働省の研究機関である国立保健医療科学院 医療・福祉サービス研究部 主任研究官に着任されビッグデータを活用した医療技術の費用対効果分析をテーマに研究しています。今後のお仕事について「価値の高い保健医療政策をスピーディに実現してゆくためには、研究者と行政官が密に連携する必要があります。それを実現してゆくのが自分の仕事だと思っています」と、それぞれの専門職が役割を発揮でき、より効率的で合理的な保健医療システムの構築の重要性についてお話ししてくださいました。
【学生へのメッセージ】
「『良い医療職』の条件とはなんでしょうか。私の答えは『自分の行っている医療行為が千葉という地域の中で、また日本の中でどんな意味があるかを認識して説明できる事』だと思います。医療専門職は医療制度、医療経済や医療情報を理解・駆使して、患者さんにより価値の高いサービスを、持続可能な形で提供し続けることが求められます。医療現場に過度な負担をかけずに、今の日本の状況にフィットした適正な医療提供にどのようにシフトことができるか？が自分の関心事項です。そのためは科学的根拠に基づく実践的な公衆衛生教育を医師・看護師・薬剤師の枠を超えて行うことが重要。公衆衛生は本当に面白く、科学的にも政治経済的にも課題が山積しており、とてもエキサイティングです。その熱量を若い皆さんとも共有し、活動してゆく仲間を増やしたい。まだまだプレイヤーの少ない分野ですから、どんどん提言して行動してゆきたいですね」と、これからの医療を担う私たち学生に社会が何を求めているのか、また公衆衛生の魅力についても熱くお話ししてくださいました。
インタビュー日：2017/05/01
文責：櫻庭唱子
吉村 健佑(よしむら けんすけ)さん
厚生労働省 国立保健医療科学院 医療・福祉サービス研究部 主任研究官
平成19年千葉大学医学部卒業。国保直営君津中央病院初期臨床研修医、千葉大学医学部附属病院精神神経科、国立病院機構千葉医療センター精神科、株式会社ジャパン・ディスプレイ(JDI)茂原工場産業医、茂原神経科病院精神科診療部長兼産業医を経て、平成27年厚生労働省へ入省。保険局 保険システム高度化推進室、医政局 研究開発振興課 医療技術情報推進室にて室長補佐として任官後、平成29年より現職。一方、教育・研究活動として、平成25年に東京大学大学院 医学系研究科公共健康医学専攻（公衆衛生大学院）を修了し、同大学精神保健学 客員研究員、千葉大学医学部 公衆衛生学・看護学部 精神 非常勤講師、横浜市立大学医学部 臨床統計学 非常勤講師などを歴任。研究テーマは医療情報、医療経済、精神保健。千葉大学医学部の同窓会である千葉県ゐのはな会・東京ゐのはな会の役員理事、また新撰医チバ世話人としても活動している。
今回のインタビュアー
飯村太郎さん(千葉大学医学部3年)
上條恵利子さん(千葉大学医学部3年)
櫻庭唱子さん(千葉大学看護学部4年)
